2月24日に母校で行われた「学術フォーラム2019」に参加しました。
これは年に1回開催され、100分程の講演や実習を一日で4コマまで受講できますので、とても効率的に学べます。
今回は、11講演から以下の4つを受講しました。
1.ノンメタルクラスプデンチャーのキモはここ!
当院でも扱っているノンメタルクラスプデンチャーの特徴・利点・欠点や4種類ある樹脂のそれぞれの特性等をあらためて学びました。
これまでの義歯に比べて薄くでき、金属のクラスプ(俗にいうバネ・義歯がはずれないように歯に掛けるもの)
を使わないので外観も良く当院の患者様にも好評です。
セット後のクラスプ維持力の調整方法について実習も行いました。
(上の写真は、その時使用した模型です)
当院で扱っていない樹脂の場合なので、そのままの活用は無理ですが、考え方は参考になりました。
2.ドライマウス診療による口腔機能低下症へのアプローチ
用意された軽食を食べながらのランチョンセミナー形式で受講しました。
昨年4月から歯科保険に新たに導入された病名のひとつに
「口腔機能低下症」 があります。
極めて簡単にいうと食べることが出来なくなれば、当然健康を損ないます。そうならないように早めに機能の低下をみつけて対応する為の病名です。
その診断は、口腔衛生状態不良・口腔乾燥・咬合力低下・舌口唇運動機能低下・低舌圧・咀嚼機能低下・嚥下機能低下という7項目のうち3項目以上に該当する必要があります。
このセミナーでは、その1項目の口腔乾燥・ドライマウスから口腔機能低下症へアプローチする方法を学びました。
その症状には、
1.口臭 2.むし歯や歯周病の進行 3.舌苔の増加
4.舌炎・口内炎 5.義歯の維持力が低下し、はずれやすくなる。
6.咀嚼・嚥下困難 7.しゃべりにくい 8.不眠
9.味覚減退 10.カビの一種(カンジタ)が繁殖する
等があります。
唾液がいかに大切な役割をしているのか、おわかりいただけると思います。
初めに行う治療は、
①唾液腺マッサージ ②含嗽 ③口腔保湿剤
の指導です。これは、既に当院でも行っております。
経過をみて、必要なら薬物療法となるそうですが、副作用の可能性があるので2か月毎に血液検査が必要だそうです。
ですので、一般的な歯科診療所で薬物療法はなかなか難しいと思います。
他に有効なのは、栄養機能食品のビタミンC・P(抗酸化作用が唾液分泌を増加)
亜鉛(味覚異常や口内炎などに有効)だそうです。
当日紹介された栄養機能食品については、当院でもアドバイスできそうです。
3.口腔顔面領域におけるマルチモダリティイメージングの有用性:歯科画像診断の最前線
なんだか見聞きしない難しそうな演題で同時間帯の他の講演にするかどうかと悩みましたが、選択して正解でした。
はじめに、昔の放射線学は、白黒だったが、今はカラーですというお話しがありました。
確かに、学生時代に習ったときは全ての画像がモノクロで重要な学問ですが、地味なイメージでした。
しかし、現在はコンピューターの活用で病変部が必要に応じて強調、色ずけされることで明確になり、カラフルになっておりました。
はじめにCT(コンピューター断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像)、RI(ラジオアイソトープ)、US(超音波)等の検査の特徴を説明していただきました。
次に、色々な疾患についてX線・CT・MRI・RIの画像を一枚のスライドに提示していただき説明していただきました。
悪性リンパ腫、扁平上皮癌、薬剤関連顎骨壊死、顎放線菌症、悪性黒色腫、顎下腺唾石、シェーグレン症候群など歯科に関係ある疾患の画像をみることができました。
X線写真以外は、普段目にしませんので、大変興味深く参考になりました。
その中で拡散強調MRIの有用性を知りました。正直言って理屈はよく理解できませんが、コンピューター処理により、数値によって癌かそうでないか等がわかるそうです。
最後にパノラマX線写真と歯科用コーンビームCTによる画像診断ということで、まずはパノラマX線写真の正常解剖を学びました。
用意された正常像模式図に講師の指示で各部位をカラーボールペンでなぞりました。学生時代を思い出し楽しかったです。
正常像を知らなければ、異常を診断できませんので、改めて勉強になりました。
そして普段当院でも撮影しているパノラマX線写真を用いてエナメル上皮腫、扁平上皮癌、骨形成線維腫症、静止性骨空洞、骨粗鬆症、埋伏歯、顎関節、インプラント、歯の破折などについてお話しいただきました。
今回の放射線学のような基礎科目を学べる機会は、意外と少ないので大変有意義でした。
4.顎関節症患者の概念は新しい局面を迎えている
講師は、丸茂 義二先生で、私が学生時代の1980年代に
「顎関節症」という疾患では全国的にも有名な母校の先生です。
その当時、顎関節症の原因は、口腔内の咬合の不調和とされ、原因と思われる歯を削ったり、レジンという樹脂で一部分を仮に高くしたり、全体の歯を覆うマウスピース(通常は上顎に)を装着したりして治すのが一般的でした。
そんな中、丸茂先生は、日常の悪い生活習慣(片側だけの行動・姿勢等)が、顎関節症の誘因であると提言したのです。
その当時は半信半疑でしたが、現在の学会の考え方は、まさにそのとおりです。
そのような歴史をお話しいただいたあと、現在の顎関節症の問題
というか、特徴をお話しされました。
現在は姿勢・行動等の生活習慣だけでは説明できない顎関節症患者さんが若年層にあるそうです。
現時点では、運動不足が原因ではないかと考えておられるそうです。
体格はよくなりましたが、体力は落ちているのかもしれませんね。
生まれてから、はいずり、はいはい等をしっかりと行うことが大切と他の場で聞いたこともあります。
つかまり立ち、歩くなどは、早ければ早いほど良いわけではありません。
成長の各過程を十分に行うことが、身体の機能の発達に大事なようです。