9月26日、母校の附属病院で行われた講演会に出席しました。
年に2回ほど行われており、無料は魅力的ですが、休診日である木曜日の夜6時に、飯田橋まで行くのは正直億劫でここ5年ぐらい不参加でした。
しかし、今回の講演内容は興味深く久しぶり重い腰をあげました。
講演1「こんな撮影法があったの?
-症例に応じたデジタルエックス線と歯科用CTの撮影ー
パノラマX線とCTの複合機の特徴について、代表的な2社を比較しながら説明していただきました。撮影範囲・画質・解像度など、装置によって違いがあるので、購入する時は実際にその画像をみることが大事だそうです。営業マンは、当然、自社の弱点は言いませんので。
装置も大事ですが、画像を正しく撮影し、読影できることの重要性をあらためて感じました。
上の写真は、機器による実効線量(簡単に言えば放射線被爆によるがんや遺伝的影響のリスクの程度を表す線量概念です)でSv(シーベルト)で表します。
ちなみに、
白内障は500mSv以上。
脱毛は3000~5000mSvで起こるそうです。
発ガンは、100~200mSvでリスクが1.08倍だそうです。
比較していただくと医療で使用しているX線は、まず問題ないことをご理解いただけると思います。
しかしながら、無用な被爆はいけませんので、いたずらに撮影することなく、必要性を常に考えて撮影しております。
特に妊婦の方の場合、お子さんがお腹にいるという、そのお気持ちを考えて対応しております。
講演2「根管治療を確実におこなうためのちょっとしたコツ」
歯内療法(歯の神経を取ったり、かつてその処置をして問題がおきた場合の治療)の手順にのっとり、キーポイントを説明していただきましたが、講演時間30分でしたので、ノートをとるのも難しい早さで参りました。
しかし、お勧めの器具・材料のなかに、いくつか試してみたいものがあったのが収穫でした。
講演3「乳幼児の口の診方・考え方」
この講演には、内容をある程度まとめたプリントがあり、追記すれば良いので助かりました。
以下に箇条書きのかんじですが、記載します。
1.乳幼児う蝕予防のために保護者に伝えること
1)歯医者さんデビュ―は?
歯医者さんに慣れるために、歯が生えたら、またはお誕生日を迎える前までのデビューを推奨されていました。
病院では、毎回歯ブラシを行ってから処置をするそうです。
2)哺乳う蝕
以前は、哺乳ビンう蝕とかボトルカリエスと言われ、夜間の授乳が一番の原因とされていましたが、現在は
ECC(Early childhood caries:早期幼児う蝕)
というそうです。母乳だけでは、歯を溶かすだけの酸はできず、その裏に必ず砂糖の存在や、不規則な生活習慣、歯磨き不足などがあるからです。
3)ECCの予防のためにすべきこと
・飲食物からの砂糖の摂取量を制限し、2歳未満の小児には砂糖を与えないようにする。
・1日に2回のブラッシングをし、フッ化物を含む歯磨剤を年齢に応じた量を用いる。(以下に記載)
・継続的な専門家によるケアを1歳前から開始すること。
4)歯ブラシの開始時期は?
・歯が生えてきたら歯ブラシ開始
最初はガーゼも悪くないが、ガーゼから歯ブラシに変えたとき、感触の違いから、過敏に反応しできなくなることがあるため、最初から歯ブラシの方が良いのではとのことでした。
歯科の専門誌や育児雑誌で最初はガーゼからと記載されていることが多く、私自身もこれまでそう説明していましたが、なるほどと思いました。
・デンタルフロスは、3歳には開始
これについての説明は聞き逃しましたが、恐らく、この頃には、乳歯が生え揃うからと思います。
乳歯は、中心からABCDEといいますが、上のAとAの間と、上下のDEの間はずっとくっついたままです。食物は入りにくいですが、逆に入ったら自然には取れません。
そこでフロスの出番です。
行政で行われている3歳6か月児健診の健診医を担当しておりますが、むし歯のあるお子さんは、ほとんど上のAとAの間のむし歯からだと前々から感じており、その予防方法について機会があるとお話ししております。
5)低年齢児のフッ化物応用
①ホームケア
フッ化物配合歯磨剤の使用量について
3~5歳:500~1000ppⅿFをエンドウ豆大5㎜以下
2歳以下:500ppmFなら米粒大 100ppmFなら5㎜以上
②プロフェッショナルケア
9000ppmFを綿球または歯ブラシで塗布するが、歯ブラシ法を推奨。4か月から1年に1回塗布 2歳以下は半年に1回。
塗布時間は、一般的に4分とされているが、1分でほぼ大丈夫とのことでした。
当院でも、歯ブラシで塗布していますが、初めて来院した小さなお子さんだと、当然泣き叫ぶ時もあり、その場合は、かえってトラウマになることを親御さんに説明し無理に行わないようにしています。
しかしながら、1分で効果が期待できるのなら、状況をみて行っても良いかもしれません。
その後、
2.過剰歯について
3. 軟組織についての対応
4. 抑制治療と全身麻酔下での治療
について講演がありました。
これらについては、次回以降のブログでお伝えできればと思います。