11月9日土曜日に多摩区歯科医師会の学術講演会が川﨑市立多摩病院講堂にて行われました。
今回の講師は、腫瘍内科の津田先生でした。
腫瘍内科と歯科、どんな関係があるのかと思われるかもしれませんが、まず抗がん剤などを投与する化学療法中の方の抜歯は原則できません。抗がん剤の作用はがん細胞だけでなく、正常な細胞にもおよび抜歯した後が治癒せずに骨髄炎などになる可能性があるからです。事前に主治医と相談し適切なタイミングで行うことが大切です。
また、投与して一週間後ぐらいから口腔粘膜炎が広範囲にできることがあるとされ、当然、その痛みで飲食の妨げになり、病気と戦うための栄養を摂取しにくくなります。
投与前や投与中に、可能な限りお口の中を清潔にしておくことで、その発症の可能性を低くすることができます。
患者さんご自身だけでは限界がありますので、歯科医院でのプロフェッショナルケアを受けたほうが良く、最近になって、やっと医科と歯科の連携が行われるようになってきました。
当院にも、化学療法を開始する前の歯科健診・清掃・口腔ケア等を目的に多くの患者さんが多摩病院から紹介され来院されております。
幸い重度の口腔粘膜炎の方は、これまでおられませんでした。
これからも療法が、スムーズに進む一助になればと思います。
講演の最初は、
「がんゲノム医療」「NCCオンコパネルシステム」「遺伝子パネル検査の保険適用」
などほぼ知らないことばかりから始まりました。
がんに対する治療は、大きく分けると下記のとおりであり、
1.外科治療
2.放射線治療
3.化学療法・・・分子標的薬(早期に効果あり)
4.免疫療法・・・効く人は少ないが、持続的であり長期
生存可能になった。
とのことです。
後半、具体的な治療の実際をCT写真などを交えてお話を伺うことができ大変興味深かったです。
化学療法・免疫療法の発展で私が認識していた以上に、延命できるようになっていることを知りました。
ちなみに、
大腸がんの場合、生物学的理由で、左側に比べて右側は薬剤が効きにくく治りが良くないそうです。
また、血管新生阻害薬(アバスチンが代表的)を服用している方の抜歯は、1か月休薬してからの抜歯を推奨されました。
この薬については、私も印象深いです。
まだ、現在のように歯科界で血管新生阻害薬の問題について周知されていなかった7、8年程前に、この薬を服用している患者さんの歯を抜いたところ、通常より治りが遅く、
「何か変だな」
と思いました。痛みは訴えられませんでしたので、しばらく定期的に来院していただき治り具合を確認した思い出があります。
その後、この薬剤を服用している方の抜歯による弊害について
歯科界にあがるようになり、やはりと思いました。
わたくしが経験した例は幸い治癒しましたが、骨壊死を起こす可能性もあるので本当に注意が必要です。
安易な抜歯はダメとあらためて思いました。