• 義歯安定剤・すれ違い咬合(神奈川県歯科医師会第18回学術大会)

新年明けましておめでとうございます。

今年の診療も、早いもので、1週間たちました。

気持ちも新たに取り組んでいきます。

 

さて、12日は、パシフィコ横浜 アネックスホールで行われた

「神奈川県歯科医師会第18回学術大会」に出席しました。

まずは、

「高齢者に義歯のマネジメントと義歯安定剤の上手な使い方」

という演題のランチョンセミナーを受講しました。

義歯(入れ歯)が合わない、食べられないというと、歯ぐきの形態と義歯の形があっていない、かみあわせがあっていないなど、単に形態的な視点だけで考えがちです。

しかし、機能低下により、義歯がうまく使えなくなる場合もあります。

具体的には、加齢による唾液減少、筋力低下、不随意運動なども咀嚼困難の原因となることがあります。

そのような症例に対し、義歯安定剤は有効とのことでした。

義歯安定剤を使用することは、私たち歯科医にとって、やむを得ず使用するといった「逃げ」の利用法のイメージがあります。しかし、患者さんの満足度を高めるためには、上手に積極的に使用する「攻め」の姿勢が、これからのアクティブ・シニア層のニーズに応えるためには、必要であるとのことでした。

歯科医になりたての頃、義歯安定剤を使うのは、邪道。それは義歯が良くないからだ。と思っていましたし、歯科界でもそのように考えられていたと思います。しかしながら、勉強し経験を重ねていくにつれて、その限界をどうしても感じるのが正直なところです。

食べたり、飲んだり、話すといった日常生活ではなく、大きく口を開けて歌う等の時は、必要に応じて使用しても良いと思います。

ただし、安定剤の弊害として、本来のかみあわせでない位置でもある程度噛めるので長期間の使用で誤った顎位になる可能性があります。

患者さんにただ「使ってください」「使っても良いですよ」と伝えるだけでなく

クリーム状、シール状、パウダー状、それぞれのタイプの利点・欠点などをもう少し勉強して、患者さんに適切なアドバイスをする必要があると思いました。

 

  • 義歯安定剤・すれ違い咬合(神奈川県歯科医師会第18回学術大会)

次に、「有床義歯の難症例を攻略する」をメインテーマとする

「無歯顎の難症例にどう向き合うか」

「すれ違い咬合への対応」

の2講演を聞きました。

欠損補綴(部分入れ歯や総入れ歯のことです)における難症例とは、

「通常の術式や補綴装置の設計を行っても 患者満足の得られない症例群」

だそうです。

昔、総入れ歯製作で高名な大学教授の「私でも2割は難しい」という言葉を聞き、少し安堵したことがありますが、現在の超高齢社会では昔以上に難症例が増えているようです。

難症例とは、総入れ歯の場合、高度に顎堤(歯ぐきの山の部分)が吸収した下顎の症例が代表的であり、部分入れ歯の場合は、すれ違い咬合が代表的なひとつです。

すれ違い咬合とは、上下の歯どうしが咬みあわない関係のことであり

①前後型 ②左右型 ③混合型

があります。

一本も歯どうしが咬まないので、上顎に対する下顎の位置が決めにくくなります。一番の問題は、義歯装着後、時間の経過ともに回転することです。

例えば、左右型だと、正面から見たとき、普通は、左右の瞳孔と歯列は平行ですが、徐々に傾いてきます。

それが、極めて短期間(6か月ぐらいの場合も)に起こります。

残った歯では、すれ違いの力を支えることができず、歯ぐきにあたっての痛みや、クラスプ(俗にいうバネ)の破折、入れ歯自体の変形や破折など様々な問題がおきます。

対応策としては、普通のクラスプの代わりにキャップのようなクラスプ、連続レストなど、義歯の装置を強固にするのですが、なかなか難しいのが現状です。

最新の対応策としては、インプラントを適切な位置(例えば第1大臼歯:6番相当)に植立し、その上に義歯を乗せて沈み込みを軽減させる方法だそうです。

プラスチックだけの保険義歯では、すぐに割れてしまうので、少なくともインプラントに接触する部分は金属にし強度を高める必要があり、当然自費の金属床となります。

残念ながら保険だけでは対応できないのが、現実です。

どうしたら良いのでしょう?

  • 義歯安定剤・すれ違い咬合(神奈川県歯科医師会第18回学術大会)